これまで文京建築会では、地域活動の一環として文京の魅力を伝える環境マップを作成してきました。「文京グリーンマップ」(2008年)、「文京ブルーマップ」(2010年)に続き「文京レッドマップ」が2014年暮れに完成し、ようやく三部作がそろいました。色をキーワードに、スケッチや写真とともに綴ってきた随筆集ですが、なかでも今回のテーマが一番難しいものでした。当初は3.11の東日本大震災があり、防災を中心にまとめようとの意見もありましたが、編集を進めるなかで、赤は自然環境から日常の暮らしまで、広がりのある色であることに気づきました。危険や防災だけでなく、祝祭や熱気を示す色であり、夕日や大地の色であり、レンガや錆といった素材の色であり、電車やサインの色でもあります。これを切り口に歴史ある文京の地ならではの、新たな話題を集めることができました。
後半の地図づくりでは文京の大地に着目し、実際に「街めぐり・崖線めぐり・坂めぐり」と銘打って、崖線を一筆書きに周辺の風景を見て歩きました。自然はもとより傾斜地との生活や工夫や遺構を、路上観察をとおしてルート地図にまとめました。何気ない事柄や断片から、場の意味や広がりを探す路上観察の面白さも知りました。湯島や根津など本郷台地の探索を残しての出版となりましたが、今後も崖線めぐりを続けていく予定です。
是非みなさまもこのマップを参考に、自分なりの文京の地の魅力を発見してみてください。
編集後記 (薩田英男)
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文京ブルーマップ 堀越英嗣(文京建築会元代表)
この本は、文京区にゆかりのある、建築家、建築士が一人の市民として文京区という地域が、どのように人びとが暮らし、働いているのかを、専門家の視点で再発見する活動を通して新しい価値や意義を見いだそうという試みの一端をまとめたものです。
その第1回目として『文京グリーンマップ』という「緑」に重点を当てた本を平成19年に出版しています。その時にも触れましたが、「地域のブランド化」というイメージを市民が共有することで、自分たちが誇れる地域として、外部に発信することを意図しています。
ここでは「ブルー」というキーワードで文京区にある、普段は気に留めることがないけれど、大切にしたい「価値」を建築家、建築士という視点で発見することを試みています。
それでは、「ブルー」とは何を意味するのでしょうか?
直接的には「青」という意味ですが、「水」「空」「影」等、ブルーを連想するさまざまな事象がイメージされます。私たち、文京区の歴史と地形に焦点をあてた勉強会を開く中で、特徴的な坂や階段や谷等の地勢学や地域の由来を古地図等から学ぶことができました。
(本書 まえがきより)